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豆知識(旧ブログ)

さこだ歯科のスタッフが綴る、口腔内に関する豆知識です。
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口角炎とは、上唇と下唇が合わさる唇の両端の口角に何らかの原因で炎症が起こるものを指します。一般的に、口角に落屑や亀裂、出血が生じ、治りかけるとかさぶたが形成されます。

乾燥した状態のものから、ジクジクと湿った状態のものまで、さまざまな病変があります。多くは痛みを伴い、飲食時などに口を大きく開けると痛みが増して亀裂がさらに深くなることもあります。

小児から高齢者まで幅広く発症します。亀裂から細菌感染や真菌感染を起こすため、治療に長い時間を要することがあり、再発しやすいのも特徴です。

日常的によくみられる病気ですが、肝障害やがんなどの重篤な病気が原因であることもまれではなく、看過できない病気のひとつでもあります。

○原因
口角炎は、口角の皮膚組織が脆弱ぜいじゃくであることと、損傷を受けた皮膚組織に感染が生じることが主な原因となります。

?皮膚組織の脆弱性
口角炎は、ビタミンB2、B6の不足によって生じやすくなるとされています。これらのビタミンは、皮膚や粘膜を正常に維持するために必要な栄養素であり、不足すると皮膚や粘膜が損傷を受けやすくなります。

口角は会話や飲食のときに絶えず開閉が繰り返され、物理的な衝撃が加わりやすい部位であるため、ビタミン不足によって損傷を受けやすいです。

?ビタミンB2、B6が不足する原因

過度なダイエットなどによる偏った食生活が原因となることが多いです。その他にも、がんや胃腸障害、肝障害、糖尿病、抗生剤の服用、アルコールの多飲などでビタミンの吸収が阻害されることが原因となることもあります。また、ビタミンB2はビタミンB6を活性化するはたらきがあり、ビタミンB2の不足はビタミンB6の不足にもつながることがわかっています。

その他、アトピー性皮膚炎や乾燥肌によって皮膚のバリア機能や潤いが失われた場合にも、皮膚に亀裂が生じやすくなることがあります。

?損傷部への感染
口角は唾液や食べかすなどが貯留しやすいため不潔になりやすく、さまざまな感染症のリスクにさらされています。正常な皮膚構造の口角では、皮膚のバリア機能が作用するため、感染が起こることはまれですが、亀裂などの損傷が生じた口角は絶好の感染場所となります。

若者では、咽頭炎や扁桃炎などを生じたときにその原因となる細菌が感染して生じることが多いです。一方、高齢者では口内に常在するカンジダが原因になることが多く、貧血や風邪のとき、疲れが溜まって免疫力が低下しているときなどに感染が生じやすいです。

○症状
口角炎では、口角に落屑や亀裂が生じ、赤みや出血などを引き起こします。亀裂部には比較的速やかにかさぶたが形成されます。しかし、口角は唾液により湿潤な状態となっており、口の開閉によってかさぶたが剥がれ、亀裂がさらに深くなることもまれではありません。

さらに、そこに細菌や真菌が感染すると、浸出液や皮疹が現れ、適切な治療を行わないと完治までに非常に長い時間を要することもあります。また、口角炎は一度発症するとくせになり、同じ場所に繰り返しやすくなります。

○治療
治療法は、感染の有無や原因菌によって異なります。

感染がなさそうな場合には、保湿効果や鎮痛効果のある塗り薬やステロイド軟膏が使用されます。また、ビタミン剤などの内服が行われます。細菌感染を生じている場合には抗菌薬、カンジダ感染を生じている場合には抗真菌薬が、塗り薬や飲み薬として使用されます。

その他、口角炎の原因と考えられる病気がある場合は、それらに対する根本的な治療が並行して行われます。